オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜

 『ユニバースエージェント』のホームページにある問合せフォームに、あるメールが届いた。

『御社の観月柚は、人の婚約者に付き纏うストーカーだ。そんな社員を雇っていていいのか?』

 個人を名指しで苦情が入る事は珍しい。メールを見た担当者は、ただ事ではないと人事部長に報告をあげた。普段の柚を知っているので、にわかには信じがたい。

 人事部長は、柚の上司である響を呼び出した。

「原井部長、お呼びでしょうか?」

「椎名くん、ちょっとこれを見てくれ」

 響は、差し出された紙を見て目を見開く。そこには、社内に届いたメールがプリントされていた。

「これは?」

 怒りの伝わる声に、原井部長が一瞬たじろぐ。

「いや、まだ真意はわからないから、冷静に話そうじゃないか」 

「真意もなにも、全くの嘘ですが?」

「はあ?」

 今度は原井部長が驚きの声を上げる。まだ、メールの事も詳しく説明もしていない。もちろん柚本人にも確認していない。