"xx、人生に名前を付けるなら何を付ける?″

そう言って彼女はふーっと一息にしゃぼん玉を飛ばす。しゃぼん玉は春の季語だと、いつだかの国語の先生が教えてくれたが、だとすると今、彼女がやっていることは季節外れなのだろうか。

「何だろう。まだ17年しか生きてないし、分かんないよ。」

昔から適当に答えるのは得意だ。しゃぼん玉の先にうっすら映る彼女を見て続ける。

「君なら付けられそうだけど。」

少し嫌味も含めて言ったつもりだったのに、彼女はいつものようにまぶしく笑って言った。

"うん! 私はね、これ!!

彼女が言いながら指差したのはぐんぐんと空にのびていくたくさんのしゃぼん玉。

街灯に照らされたそれは、昼間に見た蜃気楼のようにゆらゆら揺れて、ちかちか光って見えた。 パチパチと弾けたいしたしゃぼん玉見上げる彼女は、いつしか星が光 始めた空へと消えていった。