日本から出られない!

「ボロいアパートなんかじゃ、桜に変な虫がつくかもしれないだろ?女の子は治安がいいところに住んだ方が安心だ」

「で、でも……」

学生が住むような部屋ではない。だが、前くんは反論は認めないと言わんばかりにニコニコしていて、何も言えなくて……。

こうして恋人じゃないのに始まった同居生活は、まるでドラマで見た新婚生活みたいだった。

「おはよう、桜。ご飯できてるよ」

前くんはいつの間に料理を覚えたのか、毎朝朝食を用意してくれる。まるでシェフが作ったみたいにおいしい。私が用意しようとどれだけ早く起きても、前くんの方が早く起きてキッチンに立っているのだ。

「夜は私が作るから」

「うん、楽しみにしてるよ」

ご飯を食べて、一緒に登校する。学部が違うため授業で顔を合わせることはないけど、休み時間のたびに「何してる?」とLINEが送られてくるため、返信をする。返信しないと家に帰ってから怒られるからだ。

「同居もしてるって、もはやそれ彼氏じゃん!」

「付き合ってないのが不思議〜」