この景色を、君と何度も見たかった。

【はる said】

そうして私たちは教室を出た。

「さっきは泣いてごめん。」

彼は動揺もしなかった。

「うん。大丈夫。」

彼はそう一言だけ言った。

「さっきは何を思っていたの?」

どこから話せばいいのかわからなかった。

「私もなぜか変わりたいと思ったんだよ」

私が思いつく精一杯の言葉だった。

「でもどうして変わりたいのかがわからない。どうやって変わればいいのかもわからない。」

そうすると彼は口を開けてこう言った。

「僕もわからないよ。ただ変わりたいと思っただけ。」

私も彼の意見と同じだった。


「私の感覚は狂っている。

死んでるみたい。

その現実を受け止めきれないから、無理に笑っている。

こうでもしないとまたすべてを失うから。

さっき月城君に

『どうしたの』

って聞かれたときに久しぶりに1人では無いのかもしれないと思った。

それが嬉しくて不思議な感覚になった。

この嬉しさに対して不思議だと思うこと自体普通の人からしたらおかしいことで普通の人間からかけ離れている。

どうすればよかった?

と何度も思っても答えは見つからなかった。

何を考えるのにも重くてどうしようもなかった。

でもさっきの月城君の言葉でその重さがなんとなく私にとって嫌なものではないと思った。

まだ生きてるなと思った。

こんな普通の人が引っかかるようなことでもないことにいちいち考えている自分が憎くてたまらない。

こんな感覚にさせたY先生や悪女YUのことを許せないと思った。

でもそれはどうにもならないことで、諦めるしかなかった。

この恨み無ことしか出来ない気持ちを消そうと思っても消えなかった。

普通の人間は私に対して

『恨みは恨みを呼ぶから諦めなさい』

と言う。

いつもそうだ。

加害者は守られて被害者はほったらかしにされる。

それは月城君もわかってるよね?

加害者は幸せで毎日を過ごしているのに被害者の私たちは今、こんな些細なことをずっと考えて答えを出そうとしている。

あの子たちにとっては

嬉しいか、嬉しくないか。

幸せか、幸せじゃないか。

ただそれだけのことなのに。

この出来事自体おかしいと思わない?

あいつらは自分たちのことを加害者だと思っているかすらもわからない。

私たちが被害者だと言えば被害妄想が過ぎるとまた軽蔑した目で見てくるかもしれない。

あの時からずっと時間が止まったまま私たちは歩くことができていない。

同じ時間を進んでいるはずなのに私たちだけがずっと止まっている。

《憎しみは憎しみを呼ぶ》

『なら、復讐をしたい私たちはどうすればいいんだ』

と1度大人に聞いたことがある。

すると大人は私にこう言ったんだ。

「君が1番幸せになることが相手にとっての1番の復讐なのではないか?」

私にとっての一番の幸せが、

加害者にこの手で復讐をして加害者の人生が狂うことだったとしたら。

『君が1番幸せになることが相手にとっての1番の復讐だ』

といった大人は復讐をしてもいいよと言うのだろうか。

所詮そんな奴らの言う言葉など薄くて説得力が無いんだ。

これは私がひねくれてるかもしれないけれど、これが私の出した答えだよ。

大人が結局言いたいことは、

被害者はおとなしく黙ってれば良い

と言うこと。

責任を逃れるための言葉だろう。

だから負けたくない。

この負け癖のついた人生を終わりにしたい。

負けて、

諦めて、

隠して、

偽って、

嘘ばかりが増えて

こんな物ばっかりで、私は真っ黒で、

弱い自分を見せたくなくて、また笑顔で

『大丈夫』

って言う。

辛いよ。本当に。

親友が苦しんだ、私が苦しんだ過去は無かったことにされてしまう。

それがいちばん怖い。

それほど自分の無力さを突きつけられることは無いから。

だから、やっぱり変わりたい。」

彼はすぐに返事をしなかった。

「私間違ってる…?」

私からまた聞いた。

おかしいと言われるかもしれない。

でもこれは本当の私。

初めて嘘偽りなく言えた《本音》だった。

だから、凄く満たされた気持ちだった。

彼は

「間違っていないよ。」

と言った。

そして彼が話し始めた。