この景色を、君と何度も見たかった。

【蒼 said】

やっと数学の授業が終わった。

今日も何となく一日が終わる。

こんな毎日でいい。

普通が1番だ。

「蒼〜帰ろうぜ〜〜」

「うん、帰ろう」

「今日、カラオケ行く?」

「あぁいいね 行こう」

別にカラオケは好きじゃない。

でも郁磨といる時はなんでも楽しく感じる。

普通に楽しい毎日が送れている。

これでいい。 これがいい。

2人で教室を出て、もうすぐ下駄箱につきそうな頃、忘れ物に気づいた。

「なぁ、郁磨」

「んー?」

「忘れ物した」

「取ってくるから待ってて」

「おう、早くしろよーー」

「はーい」

少し走りながら取りに行く。

こういう時の教室までの距離っていつもと変わらないはずなのに長く感じる。

やっと着いた…


ん?


なにこれ。


教室の入口付近に1冊のノートが落ちてある。

日記

夢野はる


と書いてある。

僕は何となく、開けた。

これからの僕達はここから全てが始まった。

何となく、開けてはいけないものを開けた気がする。

あ、郁磨が待っている。

初めの1日だけ目を通してじぶんのかばんにしまった。

明日夢野さんに渡そう。

この時の僕は感覚的にこの日記の内容が見てはいけない物、触れてはいけない事、のような気がしてた。

それでも踏み込んでしまった僕は馬鹿なのだろうか。

自分自身で安全な、普通な毎日をぬけだしたのだ。

実は心のどこかでもっと刺激的な毎日を求めていたのかもしれない。