ずっと探していた人は

「タコ焼き食べるの、花火大会以来かも」

隣に並んだ大橋くんに話しかけると、大橋くんは「俺も!」と嬉しそうに答える。

いつもどちらかというと落ち着いてのんびりしている大橋くんも、珍しく隣でそわそわしている。

大橋くんもお腹が減っているときに食べ物が目の前にあると落ち着きが無くなるんだなと思うと、やっぱり男子高校生だなあと思った。

「お祭りって言ったら、やっぱりタコ焼きだよね」

「そう! タコ焼き食べないとお祭りの気分にならないよね」

私の言葉に、大橋くんはコクコクと、大げさなぐらい何度も大きくうなずいた。


「あれ、加恋?」

斜め前から、涼くんがゆっくり近づく。

涼くんの周りにはいつも通り数人の女の子がいたけれど、今日は男の子も一緒にいて、私は思わず安堵のため息をついた。

やっぱり女の子だけに囲まれる涼くんを見るのはー……傷つくから。

「もう当番終わったの?」

安心したのもつかの間、「今日は一日中当番だから」と涼くんのクラスの模擬店へ行くことを断ったことを思い出し、私はたじろぎそうになる。

「……えっと、」

「ちょっとだけ休憩がもらえたので、昼飯買いに来ただけですよ」

少しの沈黙を破り、私の代わりに答えたのは、徹だった。

「午後からも当番なので、腹ごしらえしに来ただけです」

買ったらすぐ戻りますよ、と徹は笑う。

「君は確か……」

「加恋の幼馴染です」

徹は名乗りながら、涼くんに手を差し出した。