ずっと探していた人は

「大橋くん…………!」

どうして大橋くんがここにいるんだろう。
どうして私がここにいることがわかったんだろう。

それよりも、“やっぱり”って言ったけど、みんなに私の居場所はバレているのだろうか。

混乱している頭の中に、ぐるぐるとたくさんの疑問が巡る。

「大丈夫、俺しか来てないから」

戸惑った私の隣に、大橋くんは自分のかばんを床にドスンとおろすと、自分も座った。

「ここの屋上、初めて来た」

大橋くんは何事もなかったかのように笑う。

「風が涼しいね」

もう秋だね~と言いながら、揺れる自分の前髪を抑えた。

「大橋くん…………」

「大丈夫、何も言わなくて、いいよ」

何も言えなかった私の言葉にかぶせるように、大橋くんは言った。

「今は、何も言わなくていい」

そういってくれた瞬間、私から大粒の涙が流れ落ちた。

本当は、つらかった。
どうして私がこんな目にあわないといけないのって思った。

本当は、苦しかった。
どうして彼氏なら守ってくれないのって思った。

本当は、気づいていた。
どんどんキラキラ輝く涼くんと自分は不釣り合いなんじゃないかって。

だから先輩にも言い返せなかった。

けれど、自信を持って、「彼女です」って言えない自分が嫌いだった。

止めようと思っても止められない涙が、私のスカートを濡らす。

たくさんの想いが涙と一緒に流れ出る。

どうして、どうして、どうして。

つらい、苦しい、悲しい。

なかなか涙が止まらない私に、大橋くんはただそばに座って、落ち着くまで見守ってくれた。

何か言うこともなく、ただずっとそばに、いてくれた。