ずっと探していた人は

錆びれた鉄の扉に手をかけてそっとドアノブを回す。

すると見かけによらず、すんなりとドアはあいた。

誰も来ない場所はどこだろう。

考えてたどり着いたこの場所は、私の予想通り誰もいなかった。

今はほとんど使われていない旧校舎の、屋上。

制服が汚れるかもしれない。

先生に見つかるときっととても怒られるだろう。

そんな考えは頭の中にあったけれど、もうどうでもよくなって、私はその場に寝ころんだ。

私の心と正反対の真っ青な空が私の瞳にうつると、自然と涙が流れ落ちた。

「私、何か悪いこと、したかな」

きっとあの先輩たちは、涼くんのことが好きなんだろう。

それでも、どうしてここまで私にひどいことするのかな?

「あ、そういえば」

今日は涼くん、学校に来るって言ってたな。

お昼休みに話そうって、言われていたな。

けど今日は会いたくないな。

一応涼くんには断りを入れたほうが良いかなと思い、真っ青な空を見ながら、手探りでスマートフォンを取り出す。

画面を開くと、そこにはメッセージの受信を知らせる通知が、たくさん来ていた。

【加恋大丈夫?】
【いまどこだ??】
【まだ学校にいる?】
【返事してっ】
【大丈夫?】

いつものグループトークにたくさんのメッセージが浮かんでいた。

みんな心配してくれていることが伝わってきて、早く返事しなきゃと思うのに、涙で視界がにじんで文字が打てない。

一度返事することは諦めて、寝ている自分の隣にスマートフォンを置いたとき、ブーブ―とスマートフォンが震えた。

“坂口涼”

表示された文字を見て、私はスマートフォンを床に置く。

やっぱり今は出たくない。

ギギィ…………。

目を閉じたのと同時に聞こえてきた音に、私ははっと身体を起こした。


「やっぱり、ここにいた」