「あー、やっと来た！」

驚きで固まっている私たち５人の前に、先輩たちが歩み出る。

「やっぱりみんなに真実を知ってもらうって大切だと思うからさあ」

悪びれた様子もなく、キャハハと先輩たちは笑う。

「おい、やりすぎだろ」

中川くんが黒板に書かれた文字を消そうと黒板に向かってくれたけれど、先輩たちはそれを阻止した。

「真実を伝えることは、そんなにも悪いこと？」

１人の先輩が挑発するように片方の口角をあげた。

「それにさ」

違う先輩が私の前に立つ。

「本当にあなたのことが大切なら、あなたを守るコメントを出すと思うけど？　今の状況が現実なのよ」

冷たく言い放たれた言葉に、私は身動きできずにいた。

「そろそろストーカー、やめー……」

「た、滝川さんは、ストーカーじゃ、ないっ！！！」

突如後ろで発された大声に驚いて振り向くと、大橋くんが顔を真っ赤にして叫んだ。

「滝川さんは、坂口先輩の、きちんとした彼女です！」

「あんた誰？」

言葉を遮られた先輩は、眉間にしわを寄せながら大橋くんを睨んだ。

「あんた何なの？」

「何って…………」

「もしかして滝川加恋の彼氏？」

意地悪そうに先輩が笑う。

「あー、そういうことか。滝川加恋は、涼くんをストーキングする一方で、身の程をわきまえた彼氏もいたってことか」

どこからそういう解釈になったの？

もう言葉を発する気力もなくて、ただ首を横に振る。

そんな私に向かって先輩が次の言葉を放った瞬間、私の中で何かがガラガラと音を立てながら崩れ落ちた。

“尻軽女”

気が付いたら私は教室を飛び出していた。

「加恋！」

誰かが名前を呼んでくれたけれど、振り返らずに走った。

今はただ、誰にも会いたくなかった。