「そういえばさ、大橋くんの調子はどう?」

「大橋?」

私から大橋くんの名前が出ることを想像していなかったのか、徹は少し驚いたように聞き返す。

「調子は悪くないと思うぜ。最近は投手だけ別メニューの練習になっていることが多いから細かいことはわからないけれど、黙々とトレーニングしてるって感じかな」

「レギュラー取れそう?」

私の質問に、徹は渋った。

「今の段階では三井がエース扱いかなあ。けどこれからの大会とか試合ではベンチ入りは確実だよ」

「そうなんだ」

「加恋、大橋と何かあったの?」

徹の質問に一瞬ぎくっとしたが、平静を装った。

別に何かやましい関係があるわけではないけれど、大橋くんが弱音を吐いてくれたのは、私と大橋くんだけの”秘密”だ。

「ううん、夏、ベンチ入り出来ずに凹んでいたでしょ。だから最近はどうなのかな、うまくいっているのかなって、ちょっと気になって」

「そっか。確かにあの時の大橋は、すっごい凹んでたもんな」

徹は私の言葉を疑っていないようだった。