「記事に出るってことは、この女優と涼くんは何かしら関係を持っているっていうことよ」

4人の先輩たちはまた一斉に鼻で笑って、私を見た。

「いい加減、彼女面するのー……」

「おっはよーっ!!」

先輩たちを遮るように大きな声で挨拶をしたのは、徹だった。

「ん? なにかあったか?」

ドアのところで先輩たちと対峙する私と由夢を見て、徹は不思議そうに言った。

「いや、何もない」

徹たち野球部3人と教室の中に姿を消そうとしたとき、腕を引っ張られる。

「いい加減、調子乗るの、やめてくれる?」

そう私に言い捨てると、先輩たち4人は去っていった。


「ほーんと、腹立つ」

昼休み、いつものように5人で集まると、早速朝の話が出る。

「ごめんね、由夢。巻き込んじゃって」

「私は言いたくて言ったからいいの」

私以上にぷりぷり怒ってくれている由夢を見ていると、心強いな、良い親友を持ったなって思う。

「芸能人と付き合うって大変なんだなあ」

中川くんはネット記事を読みながら、ぼそっとつぶやいた。

「はれひからへんりきてへーの?」

「ごめん、何言ってるか全くわかんない」

掻き流すようにご飯を食べている徹に言い返すと、徹はごくんと飲み込んでから言い直す。

「彼氏から返事きてねーの?」

「それが……、え、来てた! 電話来てた!」

つい3分前に涼くんから着信があったことを知らせるメッセージが、黒い画面に浮かび上がっていた。

「ごめん、ちょっと電話してくるね」

みんなの顔も見ずに、お弁当も開けたままで、私はあまり人が通らない廊下まで走った。

プルルルル、プルルルル。

2回の呼び出し音の後、「もしもし?」と涼くんの声が聞こえた。

「涼くん、あのね」

「記事のことだろ? ごめんな~」

電話から聞こえてきたのは、軽い謝罪の言葉だった。

「あの記事ってー……」

「嘘だから! 俺も今日事務所で初めて見てびっくりした」

「そうだったんだ…………」

自分の中での緊張が緩まり、私は思わずその場に座った。

「心配したんだよ」

「心配って、俺が付き合っているのは加恋だけじゃん?」

「そうだけど……」

あの先輩とはどういう関係?
何も関係が無いならどうして写真撮られたの?
否定のコメントとか出すの?

「あの……」

聞きたいことはたくさんあるのに、頭が混乱して全く言葉が出て来なくて、黙ってしまう。