翌朝、教室に入ると、由夢がスマートフォンをもって駆け寄ってきた。

「加恋! 今朝のネットニュース見た?」

「ニュース?」

何のニュースだろう?

聞き返すと、由夢の顔が苦しそうにゆがむ。

「落ち着いてね、きっと何かの間違いだから」

そう言いながら由夢が見せてくれたのは、涼くんと清純派として知られている女優さんの、熱愛報道だった。

「なに、これ…………」

表示されたニュースを読んでいるのに、内容が入ってこない。

熱愛?涼くんが…………?

「涼くんが、熱愛?」

ニュースを見せてくれた由夢に問うてしまう。

「きっと嘘だと思うけど。加恋…………?」

由夢が心配そうに、呆然とした私の目の前で、手をひらひら振る。

「あ、ごめん」

「大丈夫?」

大丈夫かどうかもわからない。何が大丈夫なのかもわからない。

ただ予想外の出来事に驚きが大きすぎて、私は何も言えなかった。

「加恋も知らなかったんだね」

「うん……」

涼くんはこの記事が出ること知っていたのかな?
昨日デートした時、何も言ってなかったよね?
それとも私、なにか大切なこと、聞き流してしまっていたかな?

色々な考えが頭の中を巡って、思わず私はその場にしゃがみこんだ。

「加恋……」

由夢もしゃがみこんで、落ち着くようにそっと背中をなでてくれる。

「涼くんから連絡はきてないの?涼くんに確かめてみたら?」

本人の口から聞くのが一番良いよ、と由夢が言う。

「そうだね……」

スカートのポケットからスマートフォンを取り出して、画面をつける。

「連絡は何も来てない……」

涼くんはまだこの記事を読んでないのかな?
今日は学校に来るって言ってたっけ?
今日は仕事の日だったかな?

「電話、してみたら?」

「うん……」