6月下旬、応援席からグラウンドを眺めると、まるでスポットライトが当てられているかのように、太陽の強い日差しがマウンドに注いでいた。

「ねえ加恋、もうすぐだね!!」

由夢は興奮を抑えられないようで、横で立ったり座ったりしている。

「ほんとだね、楽しみだなあ」

公式戦は何度も観戦しているけれど、初めて公式戦を観戦する由夢と同じほど私も興奮していた。

だってー……。

「あ! でてきた!」

隣で由夢が指さす。

選手たちがグラウンドに出てきて一礼をし、それぞれの守備位置について練習を始めるとともに、応援席から大きな声援が飛ぶ。


背番号1番をつけてマウンドに立ち、足場をならすきみの姿を、私はまっすぐ見つめる。

公式戦初めての先発と、背番号1番。

大橋くん、今きみの前にはどんな景色が広がっていますか?
自分で勝ち取ったそのポジションから見るグラウンドは、どうですか?

大橋くん、私はきみに聞きたいこと、話したいことがたくさんあるよ。


「がんばれ」

大橋くんの努力が報われますように。
大橋くんが満足のいくピッチングができますように。

大橋くんは私の気持ちが届いたのか、大橋くんはマウンドから私の姿を見つけるとー……

かすかに笑みを浮かべながら、力強くうなずいた。



これから、きみと一緒に、夏の頂点を目指す戦いが始まる。