朝一番に、電話越しに好きな人の声が聞けるのは嬉しい。


だけど……。


「おはよう、若葉」

「おはよう、純太」


こうして、いつも私の家の前で待ち合わせをして。

お互いの顔を見て、おはようの挨拶ができることはもっと嬉しい。


「純太、待った?」

「ううん、全然。じゃ行くか」


歩いて登校するようになってから、1週間。

走って登校していた頃と同じように、純太が当然とばかりに私に手を差し出してくる。

そんな彼の大きな手に、自分のものを重ねる。


純太の手は温かくて、繋ぐといつもほっとする。



──今までは朝起きるのが遅く、時間に余裕がなくて毎朝ほぼ走って登校していたけれど。


ゆっくり歩いて登校していると、走っていた時とは景色が少し違って見えるようになった。


「あー! あのお兄ちゃんたち、今日も手繋いで歩いてる。仲良しだねぇ」


道の反対方向からお母さんと手を繋いで歩いてくる幼稚園くらいの男の子と顔見知りになった。


「ああ。俺ら、仲良いだろ?」


純太が男の子に見せびらかすように、繋いだ手を掲げてみせる。