『参ったなぁ…。』

そう言いながら、紗夜の顔を伺う正明。

『イイよ…。サヤはロウソクなんてなくても。パパがいればいい。』

愛しくてたまらない健気な笑顔。

『よし!。そこのコンビニまで買いに行こう。』

『ほんとに!』

少女の目が輝く。

『智代、ちょっとコンビニまで行ってくるからな。』

(………)

返事はなかった。

『私も行く!』

『よ~し。二人で夜のお散歩だ。』



こうして、二人はすぐ近くのコンビニへ出かけたのである。


『うっひゃ~、寒いな。雪でも降るかな。寒くないか紗夜?』

『うん。パパの手、あったかい。』

『そうか?紗夜の手もあったかいぞ。ハハ。』


コンビニが見えて来た。


『んん?』

コンビニの前では、若い男女が三人、バイクの横でタバコをふかしていた。

どう見ても未成年である。

『紗夜、先に中でロウソクを探しててくれるかな。』

『は~い。』

紗夜がコンビニへと入ったのを見届けて、正明は若者達に話かけた。

『こらこら、君たちはまだ未成年だろう。タバコをかしなさい。』

『はぁ?なんだぁおっさん。』

ピアスをした男が、鋭い眼で見上げる。

『たっちゃん、こいつなに様ぁ?』

女が指を差した。手の甲にあるドクロのタトゥーに、正明が目を細める。

『殺されたくなかったら、あっち行けや、おっさん。』

たっちゃんと呼ばれた男が立ち上がる。

『き…君は…!』

その顔に見覚えがあった。

『なんでこんなやつらと…?』

その言葉に女が反応した。

『あんだと!クソじじぃ。』

正明は、つかみかかる腕を取り、軽く地面へと転がす。

『いってー!』

『あっ、大丈夫か?』

条件反射とはいえ、思いのほか女が派手に転がったので、正明は少し焦った。

『てめぇ!』

女を気遣い、かがんだ正明の腹に、ピアスの男が蹴りをいれた。

『グッ!』

その足を抱えて、正明は男の方へ踏み出す。

片足を取られ、後ろに転ぶ男に、正明がのしかかる。