イノセント・ハンド

咲の心情を、敏感に感じ取り、微笑む紗夜。

そんな二人に苦笑する富士本。

『しかし、あの少女は気付いたんだろう。そこに憎い相手がいたことに…。』

『そして、あなたを離れて、竜馬のもとへ行ったのね。』

長年、決して忘れることの無かった憎い相手。

それに偶然遭遇した時の少女を思い浮かべ、複雑な心境の咲。

『竜馬を殺してしまったら、他の犯人を見つける機会は二度とないかも知れない。少女は、そう考えたのよ。そこに彼はつけ込んだのね。』

『そう言うことだな。少女に脅され、操られるフリをしながら、実は彼が、少女を操つっていたんだよ。』

全ての謎が繋がり、真相が明らかとなった。

非日常的事件の裏に隠されていた、現実的な罪。

三人は、しばしこの真相に、それぞれの想いを噛み締めていた。



『ふぅ~。』

咲と富士本が、同時に大きなため息を吐いた。


顔を合わせて、笑い合う二人。


『富士本課長、サキさん。本当にありがとうございました。』

『やめてよ、サヤ。真実を暴くのが、私達の勤めなのよ。それだけのこと。こちらこそ、スッキリしたわ。』

『紗夜、君は何も悪くなかったんだ。もう自分を責めるのは、やめるんだよ。』

一生、この罪悪感が無くなることはないであろう。

しかし、心の重りが、少し軽くなったのを感じたのであった。

『風井警視は、本当は悪い人ではなかったんだと思います。彼に初めて会った瞬間、深い悲しみと、孤独感を感じました。私は、その重さに、立っているのがやっとなくらいでしたから。』

『んっ? あ、あぁ。そうなのか。』

『だから、あの時…』

咲は、セレモニー会場の紗夜を思い出していた。

『そうかも知れないな。彼は誰からも慕われていたからね。』

『恐らく、総監は、愛する息子を守る為に。警視は、警察という組織を守る為に…。もしかしたら、最後は、自分も死ぬつもりだったのかも知れません。』

病室で、少女につぶやいた彼の心が、読めた気がした。

『そうであってほしいな。』

紗夜の優しさに、微笑む富士本であった。