イノセント・ハンド

『確かに…あなたの中にいたあの少女が、偽装犯の山岸努を殺害したのは事実。恐らく飼沼静子、平瀬了も…。そして、真犯人である北島恵美、東信吾をも殺害したのは間違いないわ。あなたが復讐心を持ってたのも、当然のことだと思うの。でも…おかしいのよね。』

咲が、富士本を見る。

うなづく富士本。

『あなたと少女に、偽装犯たちを殺す理由は無いのよ!』

悔しさと悲しさに目を閉じていた紗夜が、ゆっくりと咲を見る。

『あの少女は、決して殺人鬼じゃない。邪魔な私達を殺そうと思えば、いつでもできたのよ。』

『その通り。銃を向けたジュンにも、全く危害を加えず、あの警視総監でさえ、殺してはいないんだよ。』

風井総監も、怪我は負ったものの、命には別状なく、捕らえられ、今も尚、余罪の調査が継続されている。

もっとも、息子の死を知った彼は、正気を無くし、老いた抜け殻と化していた。

『私と課長は、どうしても納得できなくて、調べていたの。』

『もう一つの謎だったのは、真犯人が誰で、どこにいるかを、どうやって知ったか?なんだよ。』

紗夜が、苦し気な表情でつぶやく。

『あの子が…少女の私は、一度彼らを見てるから…』

『いや、それなら17年も待つことはないだろう。恐らく、あの頃の少女には、君を離れる力は無かったんじゃないかな。あの子も幼かったんだよ。だから、君と同じ様に、顔も覚えていなかったと思うんだ。』


オカルト現象の中にあった矛盾。


三人の中で、真相が形を現していた。