イノセント・ハンド

出て行く風井の車と入れ違いに、宮本と紗夜の乗ったタクシーが署の駐車場へ入る。

『ごめんなさい、ジュンさん。せっかく誘って頂いたのに。』

宮本はすっかり、紗夜のことが好きになっていた。

そして、日曜日のデートを申し込んだのである。

『いいんです。気にしないでください。私も子供は好きですし。』

そうは言ったものの、一生懸命立てた彼の計画は台無しであった。

『でもなぜ、銀座を?紗夜さんの住んでる場所とは離れてますよね。』

『そう・・・ね。どうしてかしら。ただ、何となく。』

話しながら、刑事課へと入る。

『おお、丁度良かった。サヤ、出番だぞ。』

『何か事件ですか?』

『ついさっき、母親から電話があって、モールでショッピング中に、8歳の黄色いジャンバーを着た女の子が・・・ゆう・・・かい・・・あれ?』

富士本が、二人が連れている黄色いジャンバーの女の子を見る。

『その子は?』

『ああ、実は・・・』

説明に困る宮本に、紗夜が割り込む。

『通報してきたのは、母親なんですね。父親に連絡できますか?』

『あ・・・ああ、サキ!』

サキが母親から聞いた携帯番号のメモを紗夜に渡す。



~東京郊外~

車を走らせる東 信吾(あずましんご)。

『ふぅ。さてと。』

ミラーで後部座席を確認し、長髪のカツラとサングラス、口ひげを外す。

『ふぅ。よく眠っているな。』

その時、彼の携帯が鳴った。

『はい。東ですが。』

『東信吾さんですね?』

『はい。そうですが・・・』

『警察の者です。』

『あっ!娘は、娘の手掛かりが掴めたのですか!?』

受話器を持った紗夜が、深呼吸をする。

通話は、課内に聞こえている。

『はい。』

『良かった。で、娘は?』

『娘さんは、無事に保護しました。』

『えっ・・・?』

振り向いて後部座席を見る東。

少女は、紛れも無くそこで寝息を立てている。

『お父さん、安心してください。娘さんは無事です。』

『そんな・・・ばかな・・・』

その瞬間、紗夜の頭の中に、東の意識が飛び込んで来た。

(・・・えっ!?これは・・・)