遺体はすでに構内の一室に置かれ、駅はいつも通りに機能していた。
今時『飛び込み』は、日常茶飯事とも言え、特別な騒ぎにはなっていない。
『刑事課の者です。』
宮本が駅員に手帳を見せる。
『あ、はい。ご苦労様です。あれ?あなたは今朝の刑事さん。』
補導員を呼びに行ったあの駅員であった。
『丁度良かった。あの娘が何も話さなくて。』
『今朝はご苦労様でした。やっぱりあの子でしたか。』
そこへ現場検死官の豊川が声をかける。
『こっちだこっち。』
『紗夜さん、今朝ここに?まぁとにかく、さっさと終わらせて帰りますよ。』
『やっぱり…って?』
ふに落ちない駅員を後に、二人は部屋へと入った。
テーブルの上には黒い死体袋が寝ている。
『見て欲しいものって?』
面倒臭そうに宮本が豊川に問う。
『遺体の損傷は思いのほか少ない。彼女は立った状態で正面から衝突。頭部の強打が一番の死因だ。』
『それで?』
催促の一言。
『これを…。』
豊川が袋を開いた。
『うわっ!』
思わず声を出す宮本。
悲惨な死体を見るのは初めてではない。
しかし、女の恐怖に歪んだ顔。
未だかつて、こんな恐ろしい死に顔を見たことがなかった。
『どうしたの?』
見えない紗夜が聞く。
『いや…な、なんでもない。』
『さすがの私も驚きましたよ。でも、見て欲しいものはこれです。』
豊川が女の左手を持ち上げた。
『な…なんだこりゃ?』
『?』
紗夜の顔が説明を求める。
『このアザは、人の手に握られた跡の様だ。しかも、まだついてから数時間のものだ。』
女の手首には、くっきりと手形が浮かび上がっていた。
『大きさから言って、子供だなこりゃ。』
『豊川さん。女の子は無事なの?』
『は?なんであの娘のことを…。無事ですよ。目の前で母親が亡くなったショックからか、何も話しませんけどね。』
『娘が一緒に?だったらこのアザはその娘の…』
言いながらも宮本はバカな発言を後悔した。
『小さな女の子に、そんな力はないわ。』
『で…ですよねぇ。』
今時『飛び込み』は、日常茶飯事とも言え、特別な騒ぎにはなっていない。
『刑事課の者です。』
宮本が駅員に手帳を見せる。
『あ、はい。ご苦労様です。あれ?あなたは今朝の刑事さん。』
補導員を呼びに行ったあの駅員であった。
『丁度良かった。あの娘が何も話さなくて。』
『今朝はご苦労様でした。やっぱりあの子でしたか。』
そこへ現場検死官の豊川が声をかける。
『こっちだこっち。』
『紗夜さん、今朝ここに?まぁとにかく、さっさと終わらせて帰りますよ。』
『やっぱり…って?』
ふに落ちない駅員を後に、二人は部屋へと入った。
テーブルの上には黒い死体袋が寝ている。
『見て欲しいものって?』
面倒臭そうに宮本が豊川に問う。
『遺体の損傷は思いのほか少ない。彼女は立った状態で正面から衝突。頭部の強打が一番の死因だ。』
『それで?』
催促の一言。
『これを…。』
豊川が袋を開いた。
『うわっ!』
思わず声を出す宮本。
悲惨な死体を見るのは初めてではない。
しかし、女の恐怖に歪んだ顔。
未だかつて、こんな恐ろしい死に顔を見たことがなかった。
『どうしたの?』
見えない紗夜が聞く。
『いや…な、なんでもない。』
『さすがの私も驚きましたよ。でも、見て欲しいものはこれです。』
豊川が女の左手を持ち上げた。
『な…なんだこりゃ?』
『?』
紗夜の顔が説明を求める。
『このアザは、人の手に握られた跡の様だ。しかも、まだついてから数時間のものだ。』
女の手首には、くっきりと手形が浮かび上がっていた。
『大きさから言って、子供だなこりゃ。』
『豊川さん。女の子は無事なの?』
『は?なんであの娘のことを…。無事ですよ。目の前で母親が亡くなったショックからか、何も話しませんけどね。』
『娘が一緒に?だったらこのアザはその娘の…』
言いながらも宮本はバカな発言を後悔した。
『小さな女の子に、そんな力はないわ。』
『で…ですよねぇ。』



