『さてと。お~い宮本。ちょっとこっちへ。』

富士本が刑事課のホープを呼んだ。

『何ですか?ボス。』

『今日から、彼女がお前の相棒だ。よろしくな。』

『えぇぇぇ!』

(冗談だろ!可愛いけどタイプじゃないし・・・)

『おい、宮本。鼻の下伸ばしてないで、握手ぐらいしたらどうなんだ?』

『あ、はい。宮本 淳一です。みんなジュンと呼んでます。よろしく。』

右手を差し出す宮本。

紗夜が、少しためらった後、左の黒い手袋を外し、手を出した。

(あれれ?そうか!見えなかったんだな。しかし普通は右手じゃ・・・)

『ごめんなさい。』

『いえ!!別にどっちでも・・・えっ!?』


『何がどっちでもだ?分けのわかんないこと言ってんじゃないぞジュン。』

分けが分からないのは彼自身であった。

『サキ。お前も彼女の世話を頼むな。言っとくが、彼女はお前に劣らず美人で優秀だぞ。』

『あ~ら。遠まわしに褒めて頂けて嬉しいわ。賞味期限切れのお茶菓子でもお出ししましょうか?』

鳳来 咲が軽く手を上げる。

『さっそくだけど、ジュン。地下鉄新宿駅で、投身自殺よ。』

『自殺?サキさん。何で俺が?』

『検死官が、ちょっと見て欲しいらしいわよ。』

紗夜が、少し首をかしげたのを富士本は見ていた。

『まったく。なんですかね?しょうがない。では課長、行ってきま・・・あれ?』

『ジュンちゃ~ん。置いてかれますよ~。』

既に部屋を出かけている紗夜を見て、咲(サキ)がからかった。

『まったく。』

宮本の口癖である。