帰りの電車はそれほど混んでおらず、席も空いていた。 私たちは二人掛けの席に並んで座った。 ほとんど人が乗っていない電車の中でも、涼ちゃんは昨日と同じようにキャップを目深にかぶり、マスクとサングラスをはずそうとしなかった。 スマホでも見て下を向いてしまえば、誰も涼ちゃんだとはわからないだろう。 電車内は静かだ。 ガタンゴトンと電車が揺れる音しかしない。 その電車の音と、私の心臓の音が重なる。 一体どちらの音かわからなくなるほどに。