「美鈴、俺、今日は午前で授業終わりだから。

 そのあとバイトあるけど早く終わるし、スタジオまで迎えに行くな」


涼ちゃんは、大学生になった。

大学で芸能関係の勉強を本格的に学んでいる。

そして勉強しながら、私のマネージャーをしている。

私のスケジュール管理、持ち物チェック、オーディションの情報収集、履歴書の添削。

そして、アドバイスもくれる。

何とも頼もしいマネージャーだ。

だけど、どこかの事務所に所属している正式なマネージャーというわけではない。

自称、「田村美鈴のマネージャー」だ。

涼ちゃんの働きぶりに、私は十分満足しているけど、涼ちゃんの働きに見合った給料なんて、今の私にはまだ払えない。

だから涼ちゃんはバイトもしている。

バイトをしていた方がよっぽど稼ぎがいいことだろう。

涼ちゃんのバイト先は、いつも変わる。

毎日変わる。

仕事内容も、いろいろ。

モデル時代のコネクションを活かして、いろんな撮影スタジオやテレビ局で、それこそいろんな仕事をしている。

メイクをしたり、大道具の搬入をしたり、警備をしたり、とにかくいろいろ。

そりゃあモデル時代にあれだけ他の裏方スタッフと働いていたのだ。

涼ちゃんにできない仕事はほぼない。

それをみんな知っているから、涼ちゃんに安心して頼める。

信用している。

涼ちゃんもそこでいろんなことを勉強して帰ってくる。

以前よりも好奇心旺盛になって、知識をどん欲に吸収している。

そして、こうして朝、私のヘアメイクをしながらそれを楽しそうに教えてくれる。