「うわああああああ、遅刻するー――――」


かっこつけて語ってみたけど、突然何かが変わるわけではない。

だから今日も、私は慌てて家を飛び出す。

だけど、あの日から何も変わっていないわけではない。

私なりに、何かを変えたいと思って生きているんだから。


「おはようございます」

「おっ、田村か。新学期早々、騒がしいな」


生徒指導の先生がにやにやしながら校門の前に立っている。


「お前とこの時間にこんなところで会えるなんて、何かが襲来しそうだな」

「もう先生、間に合ってるんだから、毎日同じ小言を言うのは勘弁してください」


先生にふくれっ面を見せると、風紀委員長が私の服装チェックにやってくる。


「あの、田村さん、少々化粧が濃いような気がするんですが」

「えっ、そうかな……」

「まあ今日は新学期だしな、多少の濃さは見逃してやれ、委員長」


先生の豪快な笑い声と共に、私は登校時間に合わせて校門をくぐるようになった。

朝ごはんもなるべく食べるようにしている。

メイクも多少している。

身だしなみも整えて、忘れ物もなるべくしないようにしている。

まだ要領が悪い分、こうして時間がギリギリになる。

それでも、ちゃんと登校時間内に門をくぐることができているのだから、大きな成長である。

これも全部、涼ちゃんと過ごした日々のおかげだ。