無理、俺にして

中学生になってから、毎日のように母さんの病室に見舞いに行くようになった。


「あ、今日はユウゼンギク? 紫乃~ありがとう~」


俺から差し出される、小さな花束を嬉しそうに受け取る母さん。

予後不良と言われても、懸命に治療を続けて、こうして治療の合間には直接話せるくらいにまで回復している。

医師も奇跡の回復力だと父さんに言っているらしい。


「ふふ、紫乃みたいなイケメンからもらった花に囲まれて……母さん世界一幸せな女ね」

「……別に、通っている花屋の人のオススメを買ってきてるだけだよ。花とか、よく知らないし」

「その割に青い花が多いのは、母さんの好きな色だからでしょー?」

「……」

「ああもうっ、母さん幸せ!!」

「……っ」


細く、弱々しく。

けどあたたかい。


抱きしめられて、母さんが生きていることを実感して泣きそうになる。

……弱いなあ。

忘れたくない。

この人のこのぬくもりを忘れたくない。
天国に行ってからも、寂しくないようにずっとずっと母さんを思って泣いてあげたい。


だから今はまだ泣けない。

こらえろ、
……こらえろ。