「由利くん、ちゃんと話したい」
「先に放棄したのは青葉なのに?」
わたしが必死になればなるほど由利くんの態度は冷めていき、温度差が生まれる。
「離してくんない? おれ、用事あるんだけど」
いつもわたしの袖やスカートをつかまえて引き留めるのは、由利くんのほうだった。
それが、今は最悪な状況で立場が逆転してる。
由利くんの素っ気ない声に、泣きそうになる。
誰かに突き放されるのって、こんなにつらくて悲しかったっけ……。
由利くんの袖をつかむ指から力を抜くと、彼がわたしからすっと離れた。
そうして一度もわたしのほうを見ずに、教室から出ていく。
上履きを引き摺るようにして歩く由利くんの足音が少しずつ遠ざかっていくのを聞きながら、わたしはうつむいて唇を嚙み締めた。
どうして、こんなふうになったんだっけ。昨日の自分を後悔してもしきれない。
とぼとぼと自分の席へと引き返しながら、なんだかお腹が痛くなってきた。
お腹の少し下のほうを押さえながら椅子に座ると、「紬ー」と呼びながら、咲良がわたしに近付いてくる。



