「そ、なんだ。変な噂とかじゃないよね」
恥ずかしい話とかされてて、そういうのを覚えられてたら嫌だな。
気になって訊ねたら、由利くんが不機嫌そうに唇をへの字に曲げた。
そうして布団の中からもぞもぞと腕を出すと、わたしの口を手で軽く抑えるようにして塞ぐ。
「んー。青葉、黙って。おれ、もう限界」
眉根を寄せながら面倒くさそうにそう言ったあと、由利くんは完全に目を閉じて静かになった。
「え、ちょっ……」
口元に軽く置かれたままの手を退けて上半身を起こす。
横を見ると、既に夢の世界に行ってしまった由利くんがすやすやと気持ちよさそうに寝息をたてていた。
秒で寝ちゃうとか、どんだけ眠かったの……。なんだか、気まぐれで自由な人だな。
睫毛の長い由利くんの綺麗な寝顔を眺めて、ため息を吐く。



