アイス……、奢ってもらえるんだっけ。

 でも、今アイスなんて食べたら、身体も心も冷えちゃいそうだ。


「ごめん、璃美。せっかくだけど、アイスはいいや。ちょっと忘れ物した」

「そうなの? 教室? ついて行こうか?」

「うぅん、平気。先に帰ってて。眞部くんも、ごめん……」

 口角を最大限まで引き上げて無理やりに笑うわたしを、璃美が心配そうに見つめてくる。


「つーちゃん……?」

「ほんとに忘れ物だから。大丈夫」

 わたしは腕につかまる璃美の手を離すと、ふたりに背を向けて駆け出した。


 璃美たちと別れてわたしが向かったのは体育館。

 部活が終わったあとの体育館はしんとしていて、ドアに触ったら鍵がかかっていた。

 周囲に、由利くんや一年の女子は見当たらない。

 どこに行ったんだろう……。

 校門から真っ直ぐに体育館まで来たけど、由利くんとはすれ違わなかった。

 もしかして、体育館裏の中庭から裏門側に行ってしまったのかな。