実際に久我山先輩は中学のときから優しくて大人っぽくて、バスケも上手いし。
助けてもらったときはかっこいいなーって思ったし、憧れの人ではある。
ケガして保健室まで付き添ってもらって以来、顔と名前を覚えてもらえたみたいで、すれ違えば久我山先輩から声をかけてくれるくらいには親しい。でも、それだけ。
同中の男子バスケ部の先輩の中では一番気になる存在ではあるけど、久我山先輩に対して恋愛感情はない。
そもそも、久我山先輩は中学時代からわたしとは別次元にいる高嶺の存在すぎて、憧れの気持ちを恋愛感情とイコールで結びつけたこともない。
それなのに璃美は、わたしが高一のときに軽くしただけの話を膨らませておもしろがっている。
璃美はもちろん、わたしの久我山先輩への気持ちがただの憧れだってわかってるんだけど……。
かなり盛った話を聞かせれている由利くんや眞部くんはどうだろう。
わたしが久我山先輩を好きだと思われてそうで恥ずかしいな。
「わたしが久我山先輩をかっこいいって言ったのも、芸能人をかっこいいなーと思うのと同じだよ。ファン的な」
「えー、でもちょっと顔赤いよ」
「そんなことないよ」
ほんとうに違うのに、璃美がからかうせいで変に顔が熱くなってしまう。
「いいじゃん。久我山先輩、落ち着いてて優しいし。言ってくれたら、俺も協力するし」
わたしが久我山先輩を好きだと勘違いしたのか、璃美のからかいに悪ノリしただけなのか、眞部くんまでそんなことを言い出して。
本当に違うんだ、ってわかってもらうのに、わたしはかなりの体力と時間を奪われた。



