「そういうんじゃないよー。先輩たちをかっこいいって思うのは、なんというか、芸能人をかっこいいなーって思う感覚に似てる。ファン的な?」
「それって、結局好きなんじゃん」
ボソッとつぶやいた眞部くんの横顔を愛おしげに見つめながら、璃美がクスッと笑う。
「晴太だって、可愛いって言ってる女優さんいるじゃん」
「いるけど、それとはまたちょっと違うだろ」
「違わないよー。でもどっちかっていうと、久我山先輩に憧れてるのはわたしよりもつーちゃんだからね」
仲良く可愛い言い合いを始めた璃美と眞部くんを微笑ましく見ていると、なぜか話がわたしのほうに飛び火してきた。
璃美、眞部くん、それからカラオケを出てから一度もわたしを見なかった由利くんまでもが、一斉にわたしに視線を向ける。
好奇心や興味の入り混じった六つの瞳に見つめられて、戸惑いに揺れるわたしの視線。
「そういえば、つーちゃん、さっき久我山先輩に普通に話しかけられてたよな。知り合いなんだっけ?」
注目を集めて困っているわたしに、眞部くんが訊ねてきた。
「すごく親しいってわけではないんだけど……」
「うん」
「わたし、久我山先輩と同じ北中出身なの」
わたしが通っていたのは公立中学だったけど、特に久我山先輩の代の男子バスケ部は強かった。
地区の大会でも勝ち進むことが多くて、よく朝礼でも表彰されていた。
さっきカラオケの受付前にいたのは全員、北中男子バスケ部の一個上の先輩たち。だから、ほぼ全員の顔と名前がわかったのだ。



