「圭佑ー、会計しよう」
戸惑い気味に見つめ返していると、眞部くんに呼ばれて、由利くんの視線がそれる。
それからお金を払って店を出るまで、由利くんはわたしのほうを見なかったし、話しかけてもこなかった。
「相変わらずかっこよかったねー、先輩たち」
カラオケを出て駅に向かって歩いていると、璃美が少しうっとりしながらそう言った。
「なんだよ、璃美ちゃん。浮気?」
璃美の発言を聞いた眞部くんが、むっと唇を尖らせる。
はっきりと、やきもち妬いてますって表情を見せる眞部くんがちょっと可愛い。
そんな様子を見ていたら眞部くんが璃美のことをすごく好きなのかなって気がするけど、ふたりの付き合いは璃美の片想いからはじまったらしい。告白したのも、璃美のほうからだったんだとか。
見た目は可愛くておとなしそうなのに、璃美は運動神経もいいし、見た目よりも案外行動力がある。
今では眞部くんも璃美のことが大好きっていうのが目に見えてわかるし、ふたりは学年中に認知されているくらい仲良しカップルだ。
「そういえば最後、久我山先輩に話しかけられてもらえてちょっと嬉しそうだったよな」
璃美がさっき会った先輩たちのことをかっこいいと言ったのがよほど嫌だったのか。眞部くんは、まだ少しだけ不貞腐れている。



