ゆるふわな君の好きなひと


 由利くんたちの一個上のバスケ部の先輩たちは、梶谷先輩を筆頭に明るくて目立つチャラチャラした感じの人が多かったんだけど。

 そんななかで、久我山先輩はひとりだけ雰囲気が違った。落ち着いていて、大人っぽい。

 キャプテンだった五十嵐先輩や眞部くんたちに明るく声をかけて去って行った梶谷先輩が《動》だとすると、久我山先輩は《静》というか。

 行動全てが目立つ梶谷先輩たちのそばで、みんなの統制を保っているみたいに見えていた。

 二年生のときは軽く染めていた髪色が、受験生だからか自然な黒に落ち着いていて。そのせいか、前までよりもさらに大人っぽく見える。


「泉尾さんと青葉さんも、またね」

 久我山先輩が、わたしたちに手を振る。


「あ、はい。先輩も勉強頑張ってくださいね」

「ありがとう」

 璃美が手を振り返すと、久我山先輩がふっと笑う。その優しい表情に、ほんの少しだけドキッとさせられた。

 璃美の隣で無言でぺこっと頭を下げると、久我山先輩は五十嵐先輩と連れ立って行ってしまう。

 ふと横顔に視線を感じて振り向くと、由利くんと目が合った。

 さっきまで先輩たちに話しかけられてふにゃっと笑っていたのに、なぜか怖いくらいに真顔の由利くん。

 ダークブラウンの綺麗な瞳に心なしか睨まれているような気がした。

 どうしたんだろう……。