ため息を溢しつつ、タタンと階段を速足で駆け下りる。

 由利くんと女子達の話はまだ終わりそうにない。

 何事も曖昧なままにして逃げ出すことの多い由利くんは、どうせ彼女達の誘いもキッパリとは断れない。

 女子達に囲まれて動けなくなった由利くんを見かねて引っ張り出すのは、いつも眞部くんの役目だ。

 先に璃美と眞部くんとの待ち合わせ場所に行って、状況を報告しておこうかな。

 なんなら、テストの打ち上げのカラオケは由利くん抜きでもいいかもしれない。どうせ由利くんは、カラオケに行ったって歌わないんだし。

 由利くんが行かないならわたしも抜けたほうがいいかな。そうすれば、璃美と眞部くんはふたりでデートできるもんね。


「待って、青葉」

 女子達につかまって動けなくなっている由利くんのそばを無言で通り過ぎようとすると、思いがけなく彼がわたしを呼び止めてきた。


「置いてかないでよ」

 驚いて振り返ると、不貞腐れたように眉根を寄せた由利くんが、そばにいた女子の腕を振りほどく。


「由利?」

「おれ、今日は一緒に遊べない」

 由利くんに軽く押し退けられた彼女が、目を見開いて呆然としている。

 わたしも、彼女と同じでびっくりした。由利くんが、自分でちゃんと女子からの遊びの誘いを断るのは珍しいから。