「青葉は放課後ヒマなの?」
「ヒマではない。テスト前だし。でも、勉強するならみんなに付き合ってもいいかな」
「真面目」
由利くんが小さく首を横に傾げながら、ふっと笑う。それから、眞部くんのほうに視線を向けて口を開いた。
「晴太ー、青葉は今日忙しいって」
「え?」
勉強なら付き合うって言ったのに……。なんで勝手に断っちゃうの?
まばたきしているうちに、由利くんと眞部くんの会話が勝手に進んでいく。
「そうなんだ。圭佑はどうする?」
「おれも今日は忙しい」
「お前、それ絶対ウソだろ。いっつも俺が声かけに来るまで机で寝てんのに」
「だから、先生に呼ばれてる」
「はぁ? そんなんでテスト大丈夫なのかよ。赤点取ったら試合出れねーぞ」
「わかってる」
「先生の話、早く終わったら連絡しろよ。テスト範囲見てやるから」
「え、だる……」
「だる、じゃねぇ。小声で言ったってわかるからな」
「はいはい。泉尾さん待たせてんだから、晴太は早く行って」
小言を言う眞部くんに向かって、由利くんが手の甲でしっしっと追い払うような仕草を見せる。
「圭佑、お前なぁ……!」
「まぁまぁ、晴太。由利くんとつーちゃんも、気が向いたら来てね。とりあえず、わたしと晴太はマック行ってるから。ほら、行くよ」
由利くんに軽くあしらわれて怒っている眞部くんのことを、璃美が呆れ顔で引っ張っていく。
ときどきこちらを振り返って何か言っている眞部くんを、璃美が歩きながら宥めていた。