「あの日、わたし、校門のところでちゃんと待ってたんだよ。でも、由利くん、なかなか来ないし、一年の子に呼び出されてるっていうから気になって……。体育館のところで偶然見ちゃった。由利くんが一年の子にライン教えてるとこ」
「それと、おれとの約束放棄したことは関係あるの?」
「関係あるよ。あの子、しつこかったから仕方なかったのかもだけど。由利くんがあの子に連絡先を教えるのを見て嫌な気持ちになったし、ムカついた。わたしのこと待たせておいて、何やってんのって思った。あの子に嫉妬して、由利くんの告白に笑って返事する余裕がなかったんだよ」
あのとき、電話でもちゃんとこんなふうに説明すればよかったのかもしれない。
眉間を寄せてわたしの話を聞いていた由利くんが、考え込むようにしばらく間をあけてから、ゆっくりと口を開く。
「……おれは、青葉は久我山先輩のこと好きだから、おれに返事ができないんだと思った」
「違うよ。久我山先輩に絆創膏貼ってあげてたのは、本当にたまたまで──」
「たまたまでも嫌だったし、ムカついた。それに、おれは連絡先を聞いてきた一年の名前も顔も知らないけど、青葉は久我山先輩のことかっこいいって思ってたんでしょ」
「……、それは──」
一瞬言葉を詰まらせると、由利くんがふいっと顔を背けてわたしに背中を向ける。



