「そんなこと言わないで……」
一度は引っ込んだ涙が、また溢れてきそうで。
両手を目の上にあてる。
すぐに瞼にくっつけた手が濡れて、目尻から涙が流れていく。
ウザいって言われた……。
でも、こんな状況でもわたしは由利くんのことが好きだ。
目を覆って泣いていると、ペタッと上履きを引き摺る音がする。
由利くんが行っちゃう……。そう思ったら、咄嗟に身体が動いた。
涙を隠すのも忘れて起き上がり、由利くんのカーディガンの袖を必死につかむ。
「行かないで」
振り向いた由利くんの目が、大きく見開かれるのがわかった。
「お願い、行かないで。岡崎さんとのデートも、行っちゃ嫌だ。由利くんが、他の人と一緒にいるところを見るのはもうやだよぉ……」
ふぇーっ、と、我慢しきれずに泣き声が漏れる。
初めから、素直に伝えておけばよかった。
誰が由利くんのことを好きでも。由利くんの気持ちが本気でもそうじゃなくても……。
「好きなの……。由利くんが……」
そう思ってるわたしの気持ちは絶対だ、って。



