ゆるふわな君の好きなひと


 大野先生に聞かれないように、唇を噛んで泣き声は堪える。

 だけど、涙と一緒に鼻水が出てしまうのは我慢できない。

 堪えきれずにズビッと鼻を啜ったとき、いきなり、ザッと勢いよくカーテンレールが引かれる音がした。


 え、誰か入ってきた……!

 このまま静かに布団に隠れてれば、どっかに行ってくれるかな。

 そろそろと手のひらで涙を拭っていると、声もなく、ガバッと掛け布団が剥がされる。

 視界が明るくなって一番に見えたものは無表情の由利くんで。びっくりしすぎて息が止まりかけた。


 な、んで、いるの……?


「なんでいるの?」

 驚きとともにわたしのなかで湧き上がった疑問。

 それが、由利くんの不機嫌な声になって戻ってくる。

 だけどすぐに、


「ウザ……」

 わたしから微妙に視線を逸らした由利くんが、ボソッとつぶやくのが聞こえてしまって。

 一瞬で、絶望的な気持ちになった。