「ついでに、ちょっと休んでいってもいいですか?」
躊躇いがちに訊ねると、大野先生がわざとらしく眉を顰めて苦笑いした。
「青葉さん、ずる休み?」
「いえ、べつに……」
ずる……、と言われたら、ずるなのかも。
でも、戻ったらまた、岡崎さんたちの話が聞こえてくるかもしれない。
そう思ったら、なんかしんどい……。
うつむいて、冷やしている右手を見つめていると、大野先生がクスリと笑った。
「青葉さん、いいよ。疲れてるなら、ちょっとだけ寝て行ったら?」
「ありがとうございます」
わたしはちょっと泣きそうになりながら頷くと、ふらりと立ち上がってベッドのほうに進んだ。
保健室に三台置いてあるベッドは、今日も全部空いている。
ちょっと迷ってから、わたしは窓際のベッドを選んで寝転がった。



