ゆるふわな君の好きなひと


「つーちゃん」

 斜め前を走る璃美が、わたしにボールをパスしてくる。

 考え事をしながら走っていたわたしは、飛んでくるボールのスピードや距離感を全くとらえていなくて。

 少し高めに飛んできたボールを、うっかり右手の指で弾くようにして受けてしまった。


「痛っ……」

 これまでの経験則で、ヤバいかも……と思う。

 受け取ったボールを璃美に投げ返して、もう一度璃美からパスを受けて投げ返して。

 それから、璃美がゴールにシュートを打ったときには右手の中指と薬指の痛みがジンジンと強くなっていた。


「突き指しちゃったかも……」

 ゴールからボールを拾ってわたしのほうに歩いてきた璃美に話すと、「え、大丈夫? 保健室行こう」と、わたしよりも璃美のほうが慌てていた。


「授業終わったら行くよ」

「ダメだよ。早く冷やしたほうがいいって」

 大丈夫だと思ったけど璃美が本気で心配してくれるから、言うことを聞いて保健室に行くことにした。

 璃美は付き添うと言ったくれたけど、軽い突き指だし。

 優しさ気持ちにだけお礼を言って、ひとりで保健室に向かう。