「いつ行くの?」
「今日の放課後」
「急じゃない?」
「そうなんだけど……。朝、駅前で出会って、結構しつこく絡んだら、『じゃぁ、今日』って。待ってたら、次いつオッケーもらえるかわかんないもん」
「たしかに。気まぐれだもんね、由利くん」
笑い声に混じって、ずっと気になって仕方ない人の名前が聞こえてくる。
きっと、由利くんが断りきれないくらいに強引に誘ったのだろうけど。それでも、岡崎さんからの誘いをオッケーしたんだと思ったら胸が痛い。
さっき璃美から、由利くんが女の子とふたりきりで遊ぶことはないって話を教えてもらったばかりだったから、聞こえてきた話に余計にショックを受けた。
「つーちゃん、わたし達の番だよ」
呆然としていると、ボールを持った璃美がわたしの肩を叩いて声をかけてくる。
「あ、ごめん……」
ショックから完全には立ち直れないまま、ふらふら立ち上がる。
ボールを持って準備をしていた璃美が走り出すのに合わせてわたしも走ったけれど、足元はふわふわしていて、頭のなかもうわの空だった。
嫌だな……。
文句なんか言える立場じゃないってわかってるけど、由利くんと岡崎さんにデートなんてしてほしくない。
この前みたいに、由利くんが岡崎さんにベタベタ触られるのは絶対嫌だ。



