「先輩、わたし、棚から絆創膏取ってきます」

 気分を紛らわせてくれたお礼のつもりでそう言うと、久我山先輩は優しく笑ってくれた。

 由利くんに対して感じる気持ちとは全然違うけど、やっぱり久我山先輩は大人っぽくて優しくて、かっこいい。

 ドキッと胸が鳴るのを誤魔化すように軽く頭を下げて、保健室の壁側に置かれた棚から絆創膏を取り出す。傷がカバーできるくらい、大きめの。


「ついでに貼りましょうか?」

「あ、ごめん。いい?」

 久我山先輩のところに戻って絆創膏を差し出しながら何気なく訊ねると、たぶん先輩も何気なく頷いた。

 わたしからしてみれば、何の計算もないただの親切。

 久我山先輩も、ただそれを普通に受け取っただけ。

 それなのに……。

 ガラガラッと保健室のドアが開いて、久我山先輩とふたりで振り向くとそこには由利くんが立っていて。

 向かい合わせで先輩の左腕に絆創膏を貼っているわたしに気付いた由利くんは、一瞬大きく目を見開いて、それから瞳の色を翳らせた。