持っていたボールペンを先輩に渡すと、左腕を庇っていた右手が外れて、肘と手首のあいだに擦り傷ができているのが見える。
ひどい傷ではないけど、ところどころ擦りむけて血が滲んでいて、ヒリヒリ痛そうだ。
「大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう。さっき体育でサッカーやっててさ。梶谷が敵チームだったんだけど、あいつ、本気でスライディングしてくんの。足引っ掛けられて、腕から転んだ」
「それは災難でしたね……」
「あいつ、何につけてもオーバーアクションなんだよな」
「梶谷先輩っぽいですよね」
テスト最終日に、由利くんたちと四人で行ったカラオケで偶然に出会った男子バスケ部の先輩たち。そのなかで容姿も行動も派手で目立っていた梶谷先輩の顔を思い出して笑う。
由利くんのことで気持ちが落ち込んでいたから、久我山先輩と他愛ない話をしたことで少し元気が出た。



