大野先生に言われたように、保健室の利用者カードに退出サインをしていたら、背後でドアが開く音がして誰かが入ってきた。
「失礼しまーす」
反射的に振り向くと、ドアのところに久我山先輩が立っていた。
わたしと目が合うと、驚いたようにまばたきして笑いかけてくる。
「あ、青葉さん」
「こんにちは」
「大野先生は?」
そう訊ねながら保健室の中を眺め回す久我山先輩は、半袖の体育着に、下はジャージ姿だ。
「さっき職員室に行きました。でも、すぐ戻ってくると思います」
「あー、そうなんだ」
辺りを見回すのをやめた久我山先輩が、わたしに視線を戻す。
よく見ると、先輩は右手で左腕を庇うように軽く押さえていた。
「ケガしたんですか?」
「うん、ちょっと体育で。大きめの絆創膏もらいたいだけなんだけど、勝手に取って行っていいと思う?」
「あ、はい。ここに使ったものを書いてサインすれば大丈夫だと思います」
わたしが手元の利用者カードを示しながら言うと、先輩が「ありがとう」と笑って近付いてきた。



