ゆるふわな君の好きなひと


◇◇◇

 保健室に行くと、三つ設置してある全てのベッドが空いていた。


「ゆっくり休むんだよ」

 そう言って、教室に戻っていく咲良を見送ってから、等間隔に置かれているベッドの位置をひとつひとつ眺める。

 日当たりと風通しがよくて寝心地がいいのは窓側のベッド。

 だけど、窓側のベッドは避けて、保健室のドアに一番近い側のベッドを選んで寝転がった。

 窓側のベッドに寝たら、由利くんのことを思い出して泣いてしまう気がしたから。

 半分に折り畳まれている掛け布団を引っ張り上げて、頭までかぶると目を閉じる。

 お腹の痛みは、教室を出たときよりもマシになっている。

 でも、瞼を閉じると由利くんの冷たい眼差しが脳裏に浮かんで、今度は胸がキリキリとした。


『なんで、本気じゃないとか青葉が勝手に決めつけんの?』

 静かな怒りを含む由利くんの声が聞こえてくるような気がする。