この男に意識を持っていかれて全然気づかなかったけど確か鈍い音がしたと同時に手に何かが飛び散ったような気がしなくもない⋯。
「ひ、ぃやっ⋯!」
初めての感触に、知らない人の血。
それがあまりにも気持ちが悪くていても立ってもいられずに手をブンブンと振り回す。
いきなり取り乱した私に男は不思議そうにしながらも手についているものが見えたのだろう。
「あ、血ついちゃったね。ごめん」
取り乱す私とは反対になんて事ないよ、みたいな表情でそう言うもんだから余計に恐怖心が増した。
でも今はこの男への恐怖心よりも早く手を洗いたい。
この気持ち悪さから解放して欲しい。
そう思うのに、足はガクガクと震えてなかなか動いてくれない。
「⋯っ気持ちわる⋯っ」
血に対してトラウマとかがあるわけじゃないのに頭は軽いパニックを起こして涙が浮かぶ。
あぁ、なんかもう倒れそう。
そう思った時、血の生ぬるさとは違う温かさが手を包み込んだ。



