「亜芽。ちょっと来なさい」 開いたままの寝室のドア。 廊下から顔を覗かせた父の表情は普段と何ら変わらなかった。 「⋯なに」 「話がある。下に来なさい」 「⋯」 何が下に来なさいだ、と父を睨むと父は小さく息を吐いた。 「アイツが出ていったのは知ってるな」 「⋯」 「その事について話すから、下に来なさい」 立ち上がることさえ億劫だったけれど有無を言わせない父の雰囲気に負けて仕方なく立ち上がり後をついて行く。 トン、トン、とゆっくり階段を降りていく2つの足音はとても寂しかった。