公園のベンチに行けばいつもの様にそこに座っている藍がいて、心がぽわっと温かくなるのを感じた。
「亜芽」
私に気づいた藍が私より先に名前を呼ぶ。
不思議なことに、藍に呼ばれる“亜芽”はとても心地がいい。
「隣座ってもいい?」
「いーよ」
ゆっくりと藍の隣に腰掛けた時に気が付いた。
「藍⋯?」
「んー?」
「血、出てる」
藍の唇の端に、僅かに血が滲んでいるのを。
「わ、本当だ」
雑に手の甲で口の端を拭った藍は甲についた赤を見てなんて事ないといった様に呟く。
「痛くないの?」
「全然。痛くないよ」
「洗った方がいいんじゃない?」
「平気だよ」
ははっと笑った藍の口から白い息が零れた。
きっと藍は今日も誰かに傷つけられ、傷つけて。
悲しくて遣瀬ない思いを抱えてここにいるんだろう。



