約束は夜だから急いで帰ることはなかったんだけど、藍と会う前にキエたちと過ごすのは何だか嫌だった。
「ただいまー」
玄関のドアを開ければ母はバッグの中身を整理している最中で、
「今日も野暮用?」
嫌味の様に言った私に気づいてるのか気づいてないのか、たっぷりと口紅を塗った唇を吊り上げた。
「そうなの、ごめんね」
「⋯ううん」
「唐揚げあるから食べてね」
唐揚げ、か。
うちはカレーとか肉じゃがとか唐揚げとか、いっぺんに作れて尚且つ温めれば美味しく食べられるものが多い。
小皿で品が並ぶなんて滅多にない。
「もう行くの?」
「うん。もう出る。帰りは遅くなるから戸締りしっかりね」
「ん、わかってる」
「じゃ、いってきま~す」
また家に一人になった。



