驚いて籃の方を見た私に籃は「冗談だよ」と笑う。
「これ以上外にいたらさすがに風邪引くし、今日はもう帰ろう」
確かにだんだん気温は下がってきて、籃のダウンを半分借りている状態では籃も寒いだろう。
「そうだね。今日はもう帰るね」
「ん、そうしよ」
「よいしょ」と言って立ち上がった籃に続いて私も立ち上がる。
「亜芽、これ着て帰って」
「え?」
「寒いでしょ?」
「い、いいよ!籃こそ寒いでしょ?」
「俺は大丈夫だから。着て行って」
「でも⋯」
「返さなくてもいいし」
そういう問題じゃないんだけど⋯。
「本当に。亜芽に風邪引かれたら引け目を感じちゃうから」
そんなこと言われたら断るのも難しいじゃないか。
「じゃ、じゃあ有難く借りてもいい?」
「どうぞ」
渡されたダウンは当たり前に大きくて、籃の香りに包まれて、胸がドキンと高鳴った。



