翌日になってもやはり、警察はやってこなかった。

あの窓ガラスは今ごろどうなっているのだろう。

修理を頼んだ業者の人に、海斗くんやその両親はどんな説明をしたのだろう。

窓は明らかに外から破られているから、普通は事件を想像するはずだけれど。

わたしは頭を振った。そんなことを考えても意味がない。

「もしかして、つまらないかな?」

隣に座る来栖先輩が小声で聞いてくる。

「いえ、そんなことないです」

わたしも小さな声で答える。

わたしたちは映画館にいた。

座席に座り、巨大なクリーンを眺めている。

来栖先輩は大の映画好きで、最初のデートは映画を観たいと言ったから。

わたしは行きたいところなんてとくになく、あくまでもデートすること自体が目的だったからどこでも構わないとすぐに了承した。

上演されているのは海外の青春もの。

海外の映画賞でいくつも入選した話題作で、実際に館内は満員状態だった。