もっとも、いまのわたしには自殺は必要ない。

もう命の光が消え始めていることはわかっている。

自分でこの緊張を解けば、あとはすっと眠るようにして亡くなるのだと思う。

わたしはもうすぐに死ぬ。

隕石の前に、ようやく死ねる。

「昨日の観覧車では気づかなかったけど、こうしてみるときれいだよな、自分たちの住んでる街。普段はごちゃごちゃした住宅街くらいにした思ってなかったけど」

「そうだね」

わたしたちは展望台から街を見下ろしていた。落下防止用の柵の前に立ち、時おり吹く強い風を正面に浴びていた。

「それで、今日はこれからどうするんだ?少し散歩でもしてみるか?」

この中腹には、登山道とは別の道がもう一本伸びている。

そちらにはハイキングコースが整備されていて、ぐるりと山を周遊することができるようになっている。